ご主人の仕事の都合で、ドイツでの生活が長かったT様ご夫妻。
日本に戻られて、それまで意識しなかったヨーロッパの住環境との違いを実感したそう。見た目はおしゃれでも、いわゆる新建材だらけの日本の家づくりとは違って、ヨーロッパでは手を加えながらも何世代も住み継ぐことが前提で、本物の素材で造られているから、シンプルなのに年月が経つほどに味わい深くなる。
日本でもそんな部屋で過ごしたいと、相談に訪れてくれた。たくさん撮りためていたインテリア写真や、雑誌の切り抜きを見せていただくと、バラバラな写真の中にも、しっかり共通点が見て取れた。ステンレスと無垢の木をバランス良く使った、シンプルで大人っぽいデザイン。
クラシカルな印象のある白くて清潔なサブウェイタイルのバスルーム。無意識に、ご自分の好きな空間のイメージは出来ていたみたい。ご相談に来る前にも、毎週のようにお二人でリノベーションするための中古マンション探しをされていたが、「どこを見ていいかわからない」ので、どれも決め手に欠けていたとのこと。条件を聞き、ご要望に合いそうな数件をこちらでピックアップして、いっしょに内見に行くことに。現地で、「この壁を撤去して、キッチンをここに持ってきたら、こんなふうになりますよ」などと、今目の前にある状態と全く違う空間を、その場でスケッチにしてお見せすると、物件が持っている「良くなる素質」に気づき、目を輝かせてイメージされていた。結局決めたのは、JR浜松駅から徒歩圏の好立地にある、「このままじゃ住みたいと全く思わない」築34年の古いマンションだったけど、T様ご夫妻の目には「磨く前のダイヤモンド」に映ったみたい。インテリアデザインのポイントは木とステンレス。
黒い鉄素材を組み合わせると男前なイメージになるけど、奥様の好みは少し違った。オリジナルキッチンを中心に、ダイニングテーブルなどもステンレスを多用して、ナチュラル過ぎずシャープに、だけど男性的過ぎないように心掛けた。
最大のポイントは、日本の、それも一般の住宅ではめったに見ないようなバスルーム。
ヨーロッパのホテルのような、バス・トイレ・洗面がひとつの空間にあるバスルームをイメージしつつ、実用性を考慮して、ハーフユニットのシステムバスをガラスで仕切った。
壁のサブウェイタイルと床のヘキサゴンモザイクの組合せも最高にクールに仕上がった。
リビングには、ご主人の趣味であるフラメンコギターを存分に楽しめるよう、防音室ユニットを導入。
外観がイマイチなので、板張りでインテリアに合わせた。
日本の一般的な住宅事情から考えて、とっても「非日常」なこの部屋で、普通に日常生活をおくる。
それって、たまに海外良好で贅沢するより、よっぽど心豊かな気がする。 |